「インエッグ」(in egg)
鶏卵のサルモネラ・エンティリティデス(SE菌)汚染は、
●卵殻を通過して卵内に侵入するもの(on-egg汚染)
●体内にSE菌をもつ鶏から卵巣や卵管を経由して、
産卵後の卵内に菌が認められるもの(in-eggによる汚染)
の2種類があります。
On-egg汚染は、卵殻と卵殻膜を通って卵白まで到達するのに日時がかかる上、
卵白に含まれている「リゾチーム」に溶菌作用があり、
また、卵白の粘性が菌の進行を妨げますので、内部に至るのは大変です。
卵殻に付着したSE菌よりも、卵の中にはじめから入っている
「インエッグ」のSE菌が問題となっています。
元来、鶏卵のサルモネラ汚染は、かつてはニワトリの消化管内に寄生したサルモネラ菌が、
総排泄腔で卵殻の外側を汚染(オンエッグ汚染)するためと考えられていました。
そのため、汚染防止には鶏卵の洗浄が有効な作戦でした。
しかし、今日ではこうした卵殻の外側からの汚染のみではなく、
有害なサルモネラ・エンティリティデス(SE菌)などがニワトリの卵巣や卵管に寄生、
ここから鶏卵の卵細胞そのもの、つまり卵黄の部分に細胞内寄生し、
その外側の卵白などが保菌することによって、鶏卵を汚染している、
「インエッグ」と言う状態が発見されました。
しかも、こうしてサルモネラ菌に内部感染した鶏卵でも、補菌したまま、
健康体の雛が孵化するケースがあり、保菌鶏と気づけず再生産されることになります。
こうした親子間の垂直感染は、介卵感染とよばれ衛生状態に十分配慮した鶏舎でも、
汚染鶏卵が生産される原因となっています。
イギリスのハンフリー博士の研究では、SE菌を内部に含んだ「インエッグ」内の
SE菌は、1個の卵に菌数が1個、多い卵でも20個未満なのだそうです。
この菌数は、Mサイズ1個(約50g位)にすると、1g中には0.04カウントしかないことになり、
また、SE菌以外にも空気中や食べ物の中には必ず、細菌(バクテリア)は何種類も含まれていますが、
人体には抗菌力があり、そのような少ない菌数ではまず発症しません。
ただし、SE菌の発育・増殖の最も適した温度(至適温度)は37℃付近であり、
この温度にSE菌を置いておくと、20分に1回の割合で2分裂して増殖します。
1個のSE菌が6~7時間後には、人に食中毒を起こすに十分な約100万個になるのです。
至適温度以外でも、分裂速度は遅くなるものの、増殖は可能です。
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